校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.185
- 公開日
- 2021/07/17
- 更新日
- 2021/07/17
校長室より
No.185【本のない社会】
初めての海外旅行先は
アメリカ合衆国。
到着して最初に驚いたのは
空港内に表示されていた
その日の気温だった。
80度・・・!?
あり得ない気温の高さ。
その後ガイドブックを調べてみて
気温80度の理由に納得。
日本の気温は「摂氏」で表すが
アメリカでは「華氏」を使うのだ。
🗽
『華氏451度』
アメリカの作家ブラッドベリの
近未来SF小説である。
小説の舞台はある独裁社会。
政府は人々を従わせるために
物事を考える機会を奪っている。
そのため考えるきっかけとなる
あらゆる本を禁止している。
政府は隠された本を見つけ次第、
ことごとく燃やしていくのだ。
本を燃やす仕事をする人たちは
ファイアマンと呼ばれている。
火を消すのが仕事ではなく、
火で本を燃やすのが仕事なのだ。
本が失われた社会。
家で日々スクリーンを眺めながら
人々は何も考えようとしなくなる。
誰かにコントロールされた
一方的に流される番組。
人々の楽しみや生きがいは
画面の中にしか存在しない。
果たして本のない社会の
行き着く先は・・・
現代社会にあてはめれば
スクリーンの役割はさしずめ
テレビやスマホなのかもしれない。
小説の中の人々の姿が
生活のほとんどの時間を
画面と向き合うようになった
私たちの姿と重なってくる。
📺📚📵
「華氏」を「摂氏」に
計算し直すためには、
「華氏」の気温から32を引き、
その数字を1.8で割るという。
アメリカの空港で
私が驚いた華氏80度は、
摂氏では約27度となる。
そして小説のタイトルである
『華氏451度』は摂氏約233度。
それは
紙が自然発火する温度である。