校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.197
- 公開日
- 2021/10/09
- 更新日
- 2021/10/09
校長室より
No.197【旅が始まる】
休日のある日、
武蔵野丘陵を散歩中に
緑道でたまたま見つけたカフェ。
そのこじんまりとした佇まいに
休憩がてら、ふらりと入ってみた。
コーヒーを注文して
何気なく壁を見上げると
一枚の色紙が目に入った。
今は亡き俳優の
サイン色紙である。
10年ほど前に放送されていた
東京近郊を巡る”ちいさな”旅番組。
そこは旅人でもあった俳優が
番組撮影のために訪れた
”ちいさな” カフェだったのだ。
☕
先日読み終えた小説
原田マハ著『旅屋おかえり』。
主人公は売れないアイドル
丘えりか、通称「おかえり」。
彼女の唯一のレギュラー番組が
自身が旅人を務める旅番組である。
しかし「おかえり」の失敗から
その番組は打ち切りとなってしまう。
仕事を失った彼女が始めたのが
旅に行きたくても行けない人の
代わりに旅をする「旅屋」である。
ある時は難病で出歩くことができない
依頼者である女性のために
東北へ桜を探す旅に出かける。
しかしまさかの大雨に見舞われ、
病床の女性にお届けする
美しい桜の映像がなかなか撮れない。
何度もピンチに陥りながらも
問題を乗り越えていく主人公。
持ち前の明るさと前向きさで。
そして何より自分を待ってくれる
旅の依頼者の笑顔のために。
「トラベル」には
「トラブル」がつきもの。
旅で途方に暮れることも度々。
それでも人が旅するのは、
未知との出逢いを
心のどこかで求めているから。
そして旅から戻った時に
少しだけ成長した自分に
出逢えることができるから。
緊急事態宣言が解除され、
砧中学校の宿泊行事が
いよいよ動き始めた。
旅先で生徒たちに
多くの出逢いが訪れることを
心から願って。
🏞️
武蔵野丘陵の緑道で
偶然訪れた”ちいさな”カフェ。
今は亡き旅人の色紙を眺めながら
もう一度その番組のテーマ曲を
聞いてみたくなった。
旅に出るとつい口ずさんでしまう
旅番組のテーマ曲『ほのか』を。