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校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.39

公開日
2018/10/20
更新日
2018/10/20

校長室より

今からちょうど200年前の1818年
ある小説がイギリスで出版された。

その小説のタイトル

  −『フランケンシュタイン』

そう、私たちが映画やアニメでお馴染みの
怪物のキャラクターの原作である。

しかし、その知名度と比べて
原作を知る人は意外と少ない。

そして原作を読んでみると
私たちが抱いているイメージと
あまりにもかけ離れていることに気づく。


まずは、フランケンシュタインという名前。
それは人造人間(以下「クリーチャー」と呼ぶ)を創造した
科学を志す若者の名前である。
そしてクリーチャーには名前は与えられていない。

次に誰もが思い浮かべるあの風貌(ふうぼう)。
これは1931年に公開された
アメリカ・ハリウッド映画のキャラクターが広まったもの。
日本ではアニメ『怪物くん』でイメージが定着した。

原作のクリーチャーは俊敏で、頭脳明晰(ずのうめいせき)
そして情が深い。
自らの存在が人間から疎(うと)まれることに
悲哀を感じる心優しい存在なのである。

小説の中のクリーチャーからは
誰かを愛そうとしても
愛を与えられることのない
絶望的な孤独が伝わってくる。

そして遂には
自分を創造した若者フランケンシュタインに
復讐(ふくしゅう)心を抱き始めるのである。

フランケンシュタインはクリーチャーを怖れる。
まさに現代人が、自らが生み出した
AI(人工知能)に脅威を覚えはじめたように。


私はこの小説をホラーとしては読めなかった。
愛を求め、裏切られ、破滅に至る
悲劇の物語として読んだ。

  🎃    🎃    🎃    🎃

最後に原作者である。

当初、この小説は匿名(とくめい)で出版された。
後に原作者が明らかとなる。

メアリー・シェリー

この物語の原案を着想した当時、
彼女は18歳だった。

なぜ彼女はこの物語を創造したのか?

彼女の生い立ちを含め
その生涯も謎に満ちている。
彼女の伝記自体もまた 
映画化されるなど
今もなお人々の関心を誘う。

メアリーの言葉が残されている。

    それが悪とわかっていて
    悪を選ぶ人なんていない
    自分が求めている善や幸せと
    間違えただけなの