校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.87
- 公開日
- 2019/09/15
- 更新日
- 2019/09/15
校長室より
北極圏にある世界一大きな島グリーンランド。
日本の面積の約5.73倍、
人口は全島で約56,000人。
「グリーン」というその名に反して
国土の80%が雪と氷に覆(おお)われている。
日本ではあまり知られていなかったが
グリーンランドはデンマーク領であり、
今も本国デンマークからの
自治権拡大を求める運動が続いている。
アメリカ合衆国が購入するしないのニュースで
この数ヶ月話題となっている。
そのグリーンランドを舞台とした映画
『北の果ての小さな村で』が公開中である。
デンマークから一人の青年教師がやって来る。
人口わずか80人の小さな村チニツキラーク。
青年教師アンダース。
実家の農業を継ぐべきか悩んだ末に
現実から逃げるように
グリーンランドの中でもより過酷な環境にある
チニツキラーク村での教師を選んだのである。
「自分探し」のための職業選択。
しかし、彼の甘さはすぐに露呈(ろてい)する。
授業に全く興味を示さない子どもたち。
連絡もなく平気で学校を休む。
アンダースの悩みは学校だけではない。
厳冬の中、自宅の暖房器が故障する。
修理には何日もかかるという。
ついにアンダースのイライラが限界に達する。
「こんなことなら帰国する!」
しかし村の世話役から逆に問い詰められる。
「この地に何を期待して来たんだ?」
そう、これがチニツキラークの現実なのである。
子どもたちが将来なりたいのは
家族を支えるための狩人である。
子どもたちが将来身につけたいのは
生きるための知恵や技術である。
学校を休んだのも
祖父とともに狩り行くためだったのだ。
祖父から孫への技能の継承。
何世代にもわたり繰り返されてきた営み。
村人たちが学校や教師に何を求め、
子どもたちが本当に学びたいものが
何であるのかを知るために、
アンダースは少しずつ村人との交流を始める。
周囲が変わるのを待つのではなく、
自らが変わらなければならないのだ。
「自分のために」働く、という意識が
いつしか「村人のために」へと変化していく。
「自分探し」とは、人のために尽くした結果、
気がつけば自分自身が何かをつかんでいる、
そういったものなのかもしれない。
印象的なシーンがある。
アンダースは村人や子どもたちと一緒に
食糧としてのシロクマ狩りの旅に出る。
交通手段はもちろん、犬ぞりである。
猛吹雪に耐え、
雪穴で夜を過ごし、
やっとの思いでシロクマに遭遇する。
しかしそのシロクマが子ども連れと知った時、
村人たちは狩りを諦(あきら)める。
大自然に向き合って生きる狩人たちの
「仕事」に対する厳格なルールがそこにある。
❄️ ❄️ ❄️ ❄️
その後のアンダースはどうなったのか?
彼は今もチニツキラークで教師を続けているという。
そう、この物語は実話なのである。
※2年生職場体験、お疲れ様でした。