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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.97

公開日
2019/11/23
更新日
2019/11/23

校長室より

〜 ナスカ地上絵、新たに143点発見 〜

数日前の新聞でこのニュースを知った。
山形大学の研究チームが
史上初めて人工知能(AI)を使い
地上絵を新たに発見したという。

【ナスカ地上絵】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
南米ペルーのナスカ高原。
今から数千年前の人々が
100メートルにも及ぶ
幾何学模様や動植物の巨大な絵を
地表に描いているのだ。

20世紀初頭に発見され
航空機が無かった数千年前、
何の目的でどうやって描いたのか
世界の謎とされてきた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

🇵🇪

私が中学生の時、
この地上絵に関して
クラスを二分する論争が巻き起こった。

科学的可能説と宇宙人説。
科学的可能説のリーダーは
理科大好き少年A君。
そして、宇宙人説のリーダーは・・
私である。

当時の技術で巨大な絵を描くのは不可能、
それも空からしか見えないような絵となれば
宇宙人の地球着陸の目印でしかないという私。

不思議なことがあれば宇宙人のせいにする、
その短絡的な思考が科学の冒涜(ぼうとく)であり
杭(くい)と縄(なわ)があれば描けるというA君。

A君は鉛筆と紐(ひも)を使い、
地上絵の描き方を一生懸命私に説明した。
宇宙人説に固執している私のグループは
そんな説明には全く興味を示さない。

「夢とロマンが無いんだよ」と批判する私。
「科学こそ夢とロマンだ」と反論するA君。

「じゃあ聞くけど、ネッシーも否定するわけ?」
私はA君に対して別の話題で攻める。

「あの写真もきっと捏造(ねつぞう)だよ」
ネッシー存在説を全面的に否定するA君。

【ネッシー】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
イギリス スコットランドの
ネス湖に生息していると言われる首長竜。
当時、恐竜の生き残りではないかと
湖から長い首を出した写真が話題となっていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

A君グループは少数派。
それに比べて私のグループは大人数で
数の上では圧倒的に有利だった。
その多数派の安心感からか
私はお堅い主張を繰り返すA君グループに
ムー大陸から雪男伝説まで
世界の超常現象について語り続けていた。


45年経った今。
振り返ってみると
当時のA君の主張が
ことごとく当たっていたことになる。

ネッシーの写真はその後、
撮影者自身が捏造であることを認めている。
そして最新のDNA調査により
巨大なウナギ説が有力となったのだ。

ナスカの地上絵の描き方は
当時A君が説明した通り
「拡大法」という手法で
今では小学校の算数の授業でも実践されている。

私の夢とロマンは
科学の夢とロマンに完敗した……かに見えた。

👽

今年のノーベル物理学賞。
受賞したスイスの研究者は
不可能と言われた
太陽系外の惑星発見に成功した。

この惑星発見により
地球以外の星に生命体が存在しているという
科学的成果への期待が急速に高まってきた。


半世紀前のクラスでの大論争。
改めて思い返してみると
A君も私も
「好奇心」旺盛だったことは共通していた。
「科学」と「空想」という
名前は異なる「好奇心」ではあったが。


「科学も宇宙人も夢とロマンだね」
私はタイムスリップして
半世紀前のA君と握手したい気持ちになった。