『富岳の眺め』No.94 余録
- 公開日
- 2019/11/02
- 更新日
- 2019/11/02
コラム
『男はつらいよ』の魅力の一つが
毎回、寅さんが惚れてはふられる
女性たち(マドンナ)である。
昭和を彩(いろど)った女優たちの名演。
その美しさに、立ち居振舞いに、
映画の中の寅さんと同じように
見とれてしまった観客も多いことだろう。
先日亡くなられた八千草薫さんもその一人。
私が見る限りでは
映画の中で八千草薫さん演じる千代は
明らかに寅さんに恋慕を抱いている。
それなのに全く気づかない寅さん。
そのもどかしさに
観客も「何やってんだ」とイライラする。
いや、もしかしたら寅さんは
気づいているのかもしれない。
それでも一歩を踏み出せない不器用さ。
それが寅さんなのだと改めて思う。
👘
現在NHK総合で土曜夜に放送中の
ドラマ『少年寅次郎』。
そう、寅さんの少年時代を描いた
『男はつらいよ』エピソード0である。
実は『男はつらいよ』の世界観が壊されるのではと
放送前、私は観ることをためらっていた。
第1話だけ観て、
今一つだったら、それ以降観るのはやめよう、
そんな軽い気持ちで見始めたのだ。
そして今、完全に虜(とりこ)になってしまった。
『男はつらいよ』全49作品との見事な調和。
特に育ての母親役を演じる
井上真央さんの演技に涙腺が緩みっぱなしである。
成人した寅さんがその後出会うマドンナたち。
その原点は育ての母親にあったのではと思わせる。
昭和の大女優たちの魅力を
見事に体現した井上真央さんの演技に
令和の女優への期待が高まる私なのである。
※『富岳の眺め』No.45(2018年12月1日up)でも
『男はつらいよ』を取り上げています。
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