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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.126

公開日
2020/06/13
更新日
2020/06/13

校長室より

No.126【『昨日』は大人のしたこと】

昨年9月
私はある演説に衝撃を受けた。
グレタ・トゥンベリさん(16)による
国連気候変動サミットでの訴えである。

「私たちはあなた方を見ている」

気候変動という環境危機に無策だった
大人世代に投げかけた彼女の怒りは、
未来に対する無責任さを
厳しく指摘するものだった。

私はその演説映像を見ながら
二十数年前、社会科授業で取り上げた
一人の少女のことを思い出していた。

🌎

坪田愛華さん
島根県に生まれた彼女は
1991年当時、小学6年生。
環境問題を調べる学校の課題。
彼女は自分で調べた成果を
得意の漫画で表現しようと考え、
2ヶ月かけて作品に仕上げた。
しかしその完成から数時間後、
突然、脳内出血で倒れ、
その短い生涯を閉じることになる。
享年12歳。

彼女の遺(のこ)した作品を
両親は自前で50部印刷をして
同級生や先生に配ることにした。
その後、この作品の素晴らしさが
次第に多くの人々に感動を与え、
英語や中国語などにも翻訳される。
1993年、国連環境計画での
受賞をきっかけとして
世界中のマスコミで話題となった。

『地球の秘密』(坪田愛華 作)

敬遠されがちだった環境問題を
子どもにも大人にもわかりやすく、
そして自分の問題として考えさせる、
今も色褪(あ)せないメッセージ。

改めてその作品を読み直し、
21世紀の今もまだ
彼女の訴えに答えられていない
大人世代として恥ずかしさを覚えた。

「愛華はこの作品のために生まれてきた」
当時の母親の言葉が胸を打つ。

日常に様々な制限がある今だからこそ
便利さに慣れた生活を
見直す機会にしたいと心に誓う。

〜 愛華さんのメッセージから 〜

『昨日』は大人のしたこと
『明日』は子供のすること

缶を捨てるのは『過去』
拾うのは『未来』

缶を捨てる軽さと
缶を拾う重さを考えよう