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校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.140

公開日
2020/09/20
更新日
2020/09/20

校長室より

No.140【悪人とは】

松永久秀という戦国武将がいる。
戦国時代ファンを除いては
あまり知られていない人物である。
歴史の教科書に載ることもない。
しかし、一般の知名度は低いものの
あの織田信長が「悪人」と怖れた
謎多き武将なのである。

松永久秀はなぜ
「悪人」と呼ばれたのか?

彼はその生涯において
三大悪事を犯したとされる。
主君の三好家を裏切り滅ぼした。
そして将軍・足利義輝を暗殺した。
さらには奈良・東大寺大仏殿を
焼き払ったと言われている。
ついには織田信長を二度も裏切り、
壮絶な最期(さいご)を遂げることになる。

並大抵の悪人ではない。
まさに極悪人と呼ぶにふさわしい男なのだ。

🏯

今村翔吾の小説『じんかん』。
その松永久秀を主人公とした
歴史エンターテイメントである。

久秀の生いたちは謎に包まれている。
作者は大胆な発想と推理で
その人生を辿(たど)っていく。
史実とフィクションを織り交ぜながら
彼の犯した三大悪事の背景と動機を
丁寧に解き明かしていく。
そして読者はいつの間にか
これまでのイメージとは全く異なる
松永久秀を知ることとなるのだ。

苦難を乗り越えてきた兄弟愛、
生涯忘れなかった友との誓い、
そして幼き日の淡い恋心。
読み進めていくうちに
時代に抗(あらが)い
愛する人たちのために
戦乱の世を駆け抜けた
夢追い人がそこにいる。


「悪人」とされる松永久秀。
現代を生きる私たちもまた
自らを「正しい」と信じ、
誰かを「悪」として叩(たた)こうとする。

人間(にんげん)とは「善」と「悪」に
単純に分けられるものではない。
「善」でもあり「悪」でもある。
それが人の世としての
“じんかん“(人間)の常(つね)である。

小説の中で久秀が
夢について語る場面がある。

「夢に大きいも小さいもない
お主(ぬし)だけの夢を追えばいいのだ」

📺

松永久秀は果たして
時代が求めた革命の人だったのか?
それともダークヒーローだったのか?

今年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。
いよいよ松永久秀が動き出す。