校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.171
- 公開日
- 2021/04/17
- 更新日
- 2021/04/17
校長室より
No.171【進んで勉強しなさい】
言葉とはとても難しい。
良かれと思って相手に伝えても
そう受け取られない事がよくある。
「自分から進んで勉強しなさい」
大人が子どもによく使う言葉。
使う大人の側は良かれと思っている。
しかし受け取る子どもはそうではない。
逆に大人に不信感を持つのだ。
なぜ不信感を持つのか?
もう一度この言葉を
じっくりと見直してみると
違和感を覚えてくるはず。
📐
「カバ園長」として親しまれた
元東武動物園長の西山登志雄さん。
私が今も忘れられない
西山さんの講演会でのお話。
動物の中で一番奇妙な生き物、
それは人間なんです、と
西山さんは語り始めた。
檻(おり)の中の動物を背景に
家族が記念写真を撮っている。
親が子どもに声をかける。
「ほら、笑って!」
「笑い」を命令される子ども。
戸惑う子どもに対して
さらに親は追い打ちをかける。
「笑ってと言ってるでしょ!」
怒られながらも笑う子ども。
親は満足そうに記念写真を撮る。
楽しい思い出をつくるための
動物園での記念写真。
子どもにとって
その強いられた笑顔の写真は
果たして楽しい思い出と
なっているのだろうか?
西山園長は最後にこう結んだ。
人間はこうやって
作り笑いを学んでいくのです。
🦛
「自分から進んで勉強しなさい」
この言葉のどこに
違和感を覚えるのか?
「自分から進んで」は
子どもが自発的に
勉強してほしいという
願いからの言葉である。
しかし後に続く
「勉強しなさい」は
子どもへの命令となっている。
子どもの側からすると
自分から進んでと言われながら、
一方では大人から命令されている。
たとえ子どもがその言葉を受けて
勉強に取り組んだとしても
それは決して自発的とは言えない。
「主体的な学び」が主流となる
これからの学校教育。
「主体的に学びなさい」という
大人の安易な言葉かけではなく、
私を含めた大人自身が
主体的に学び続ける姿を見せることが
子どもの「主体的な学び」へと導く
近道だと思っている。