校長室の窓から〜『富岳の眺め』No.207
- 公開日
- 2021/12/17
- 更新日
- 2021/12/17
校長室より
No.207【その名は資本主義】
最初に例え話を一つ。
美味しい水に恵まれた
ある村があったとする。
村人たちは谷間から涌き出る
ミネラル豊富な美味しい水を
飲みたい時に自由に飲んでいた。
しかしある人がその水に目をつけて
谷間の土地ごと買い占めた。
そして水の涌き出る場所を囲い込み、
自由に飲めないようにしてしまう。
さらにはその水を商品として
値段をつけて売り始めた。
ミネラル豊富で美味しい水を
飲みたい時に自由に飲んでいた
村人たちもお金を払わなければ
飲めなくなってしまう。
その水が美味しいと評判になり、
各地から人々が水を買いに来る。
水を売っている人は
もうすぐ水が無くなると宣伝して、
先着順に売ることを思いつく。
今まで以上に値段を高くして。
🏞️
この例え話を
私たちの日常に当てはめて
考えてみた。
「先着○名まで」
「限定□個まで」
そんな広告を目にすると
急いで商品を買わなければと
つい気持ちが焦ってしまう。
「品切れになる」
「次の入荷は未定」
そんな話を耳にすると
外出自粛期間中であっても、
店の前には長い行列ができる。
その商品の値段が高くても
気にしてはいられない。
まずは手に入れることを
最優先してしまう。
他人より先に買うことができると
逆に「得をした」気分になる。
好きな時に好きなものを
自由に買うことができる幸せ。
しかしその幸せは
誰かによってコントロールされた
幸せなのかもしれない。
😷🎮
最後に今年の大河ドラマ
『青天を衝け』から。
江戸から明治へと時代が変わり、
日本経済が急速に発展する。
武士の時代には
お金儲(もう)けよりも
名誉が重んじられてきた。
しかし経済が重視されると
人々は自分の懐(ふところ)を
潤(うるお)すことに夢中になる。
三野村利左衛門。
ドラマの中の登場人物の一人。
そして明治の日本経済を
支えてきた重要人物でもある。
お金中心となった明治の世。
三野村自身が目指してきた社会。
しかし人生の終わりを前にして
彼はその進んできた道が
果たして正しかったのか自問する。
ドラマの中での
三野村の最後のセリフから。
あたしら開けてはならない扉を
開けちまったかもしれませんぜ。
さぁて、どんな世に
なりますかねぇ・・・
※ 参考
『人新世の「資本論」』斉藤幸平 著