校長室の窓から〜『富岳の眺め』 No.24
- 公開日
- 2018/07/15
- 更新日
- 2022/01/02
校長室より
一つの歌と出会った。
福島県いわき市。
「災害ボランティア派遣」として、
都立高校生に同行した時のことである。
福島県の被害は「複合災害」と言われる。
震災被害、原発事故による被害、
そしてそれに伴う風評被害。
特に福島県の産業に深刻な打撃を与えたのが、
風評被害である。
福島産というだけでモノが売れない。
観光業での売上の激減。
そんな中、あるNPO法人が産業振興として取り組んだのが、
新たな作物オーガニックコットンの栽培だった。
雨の中、高校生と一緒に綿の摘み取り作業に従事した。
福島の現状を既に地元の方々から学んでいた生徒たちは
ずぶ濡れになりながらも、誰一人文句を言わなかった。
そんな時、初めてこの歌を聞いた。
地球が流した大きな涙
世界中が震えた
できることなど何もない
ただ暗闇の中、立ち尽くした
優しいメロディーとは裏腹に
被災者でしか伝えられない心に重くのしかかる冒頭の歌詞。
地元いわき市の音楽ユニット「花音(ハナオト)」が歌う
『Tear of Earth』だった。
歌の後半は、絶望から再起を目指す人々の思いが込められる。
本当に何かを失うその時は
全て諦(あきら)めた時でしょう
元気で過ごしていれば
何度でも立ち上がれるから
元気で過ごしていれば
何度でもやり直せるんだ
その夜、宿泊先に戻った後、
動画サイトで検索し、何度も何度も再生した。
涙ぐんでいることを高校生に悟られないように。
「花音(ハナオト)」は「心に響く、心に寄り添う音楽」を目指し、
現在も福島県内各地でライブ活動を行っていると聞く。
2020年オリンピック・パラリンピックの
聖火リレーのスタート地が福島県と決まった。
西日本を中心とする豪雨災害で被災された方々の
苦しみや悲しみに思いを馳せながら
この歌が多くの人たちに届くことを願ってやまない。